NGT事件につき、第三者委員会報告書、マスコミ記事、メンバー達の発言、弁護士の見解等々を比較・整理し、何が「確かに言えること」かを整理します。


本項では、「厄介(やっかい)」という単語が、グループアイドル界隈で、
「劇場・イベント会場・ライブ会場、さらにはアイドルのプライベート空間において、悪質な迷惑行為、犯罪行為を行う者」
として使われる場合の単語の意味と概念につき詳述する。
同概念の「厄介」は、「厄介ヲタ」「迷惑ヲタ」とも呼ばれる。(「ヲタ」とは「オタク」の略称)。

「厄介」「厄介ヲタ」はAKBG(AKBグループ)に特有の存在では無い。
メジャーアイドル、地下アイドルなど、ショービジネス全般に見られる迷惑行為・犯罪行為を行う者の存在があり、それらの呼び名としても使われている。

NGT48暴行事件に関わった暴行犯ら甲乙丙(第三者委員会報告書に「甲乙丙」と表記された3名)も「厄介」である。
甲乙丙についても、第三者委員会が述べた内容を基礎として解説する。
ただし、これら3名を含め、本項では実名表記を行わない(被疑者および犯罪者の人権擁護のため)。

一般で使われる「厄介」の意味についてはこちら(goo辞書)を参照。
以下、2009年頃から現れた用例を基に、概念を整理する。

おおよその概念

概容

辞書などにおいて明確に定義づけられた事は無いが、グループアイドル界隈における「厄介」とは、2020年9月現在でおおよそ、以下のような項目のいずれかまたは複数・全部を満たす者を指して、ネット上で使われるようになっている。
  1. アイドルや他のファンに対して迷惑な行為を行う者
    1. 劇場・ライブ会場(コンサート会場)で、公演中に周囲と合せない大声を出したり、ジャンプしたりサイリウムライトを高く掲げて振り続けたりして後ろの観客の視野を遮ったりする
    2. 劇場・ライブ会場(コンサート会場)で、良い座席を奪うなどする
    3. 握手会会場等で、割り込んだり、持ち時間を超えて握手や会話を続けたりする
  2. 上記劇場・ライブ会場(コンサート会場)・握手会会場等、イベント会場で、他のファンに暴力行為を働く者
  3. アイドルに握手会で自分の名前を覚えさせようとする者(自然に覚えて握手会で名前を呼んでもらうなどするまではルール容認内であるが、「覚えさせる」という者は「認知厨」などとも呼ばれる)
  4. 握手会会場で、わざわざ握手に並んで相手アイドルに暴言を吐くなど、アイドルを傷付ける者
  5. アイドルの個人情報を得たり、住所を特定したり、つきまとったり、郵便物を窃取したりする(2009年に発生)など、ストーカー行為・犯罪行為を行う者

用いられる場面により、上記「迷惑行為を行う者」「犯罪行為を行う者」のいずれか、もしくは全てを指す。
厄介同士が仲間となり、集団で迷惑行為を行って周囲を威圧する(威圧して良い席を奪うなどする)場合もあり、1の段階の厄介でも、大変悪質かつ暴力的なケースも多々報告されている。
犯罪行為については、玄関で女性を2人がかりで襲った2018年12月8日発生のNGT48暴行事件のように、極めて深刻な事件に発展しているものもある。

2018年頃までは、熱狂的なファンに対し「厄介ヲタ(のよう)じゃないか」などと揶揄したり、熱狂的なファン(あるいは同じアイドルグループの別メンバーに対して熱狂的なファンであるかのように振る舞うメンバー)が自虐したりといった場面で、「冗談」としても使われていた。
しかしNGT48暴行事件発覚以降(2019年以降)、「洒落では済まなくなった」彼らの実態が広く知られるにつれ、そうした「ネタ」として使われる用法は激減した。

迷惑行為・犯罪行為は、2009年頃からネット上にも痕跡が残っており、2012年頃からはまとまった形でネットに記録が残されている。
2014年には、AKBGに限らず、迷惑行為・暴力行為を行う者達の集団が存在する事が、ネットメディアでも報道されていた(-(2014/01/21)サイゾー)。

AKBGに限定されず、幅広く存在する厄介

「厄介」はAKBGに限定的な概念・事象ではない。
坂道グループにも存在している(乃木坂の握手会で迷惑行為多数発生 握手会廃止の声も(財経新聞2018年9月9日))ほか、メジャーアイドルのみならず、マイナーなアイドル、地下アイドル界隈でも、その存在が問題視されている。
元地下アイドルの激白記事でも、「迷惑ファン」「厄介ファン」という単語が同意語として使われているケースがある(DIAMOND online「暴走する厄介ファンも野放しにする事務所」)。
ニコニコ大百科での記事「厄介とは (ヤッカイとは) 」では、声優のライブ会場が用例の中心に挙げられて居る。

「厄介が存在する事」それだけで、AKBGが取り立てて悪質であるとは言えない。
論点となるのは適切な対策の有無と、各具体策が適正かつ有効であるかどうかである。

背景「善良なファン個々人と、悪質なファン集団」

20世紀のアイドルには「親衛隊」がおり、劇場やコンサート会場でファン同士の秩序を保つ働きをしていた。
善良なファンによる「集団組織」があった事になる。
20世紀
悪質ファン個人
善良なファン親衛隊+個人

ところが2005年発足のAKBにはそのような存在が居ない。基本的に善良なファンは個人で劇場に行き、個人で握手会に参加する。
逆に厄介は、集団で行動する事が多い。
従って
21世紀
悪質ファン(厄介)集団
善良なファン個人
という図式になる。

こうして、厄介集団が周囲の個々人のオタクを威圧して、座席の確保・奪取や、握手会での時間延長といった目的を達成する事は、比較的容易であるという危険な状況が生まれた。
運営側は、これを制圧する意識に乏しかったのか、人員等が不足していたのかは不明であるが、少なくとも結果を見る限り、厄介の跳梁跋扈を制圧し切る事は出来ていなかった。
  • 20世紀アイドルには居た親衛隊の不在
  • 良識ある普通のファンは個人で動く
  • 悪質なファンは集団で動く
  • 運営からの制圧努力の不足
これらが厄介の行為を質・量、共にエスカレートさせていった事が、諸事件の背景にある。

AKBGにおける規模

「厄介」の全国規模の全貌は不明である。ただ、大変多いとは言える。

本項では具体的には扱わないが、「厄介」とされる人物については、ネット上で、アカウント名・綽名などで名前が挙げられ忌み嫌われている事も少なくない。
その内どれが本当に「厄介」であるかは検証が困難であるが(それゆえに個々の事例は扱わない)、「数名」といった規模では無い事は確かである。
例えば2015年のある掲示板では、「厄介の一覧」が挙げられているが、十数名の厄介が挙げられており、しかもそれで「全て」であるとは書き込み者達は認識していない。
トラブルの数々を見ても、最低でも数十名、多ければ百数十名規模の「厄介」が全国に散在していると考え得る。

「数十名〜百数十名?」はあくまでAKBGにおける推測人数であり、他のメジャーアイドル、マイナーなアイドル、地下アイドルに存在する厄介まで数える範囲を広げれば、桁が異なる人数を推測し得る。

言葉・概念の歴史

ピンチケ

「ピンチケ」とはピンクチケットの略であり、このチケットは女性・高校生以下に売られるものであったことから、特に高校生以下のファンを呼ぶようになった。

元来は「ピンチケ」は「女性と中高生ファン全体」の語義であった(ハロプロファンが「AKB用語で女性と高校生以下」と説明しているブログが残っている)が、いつ頃からかは不明であるが、「迷惑行為を行う若いファン」が「ピンチケ」と呼ばれるようになった(サイゾーでこの語義での記事が出たのが2010年4月、ニコニコ大百科でこの語義で記事が立てられたのが2011年9月である)。
この「ピンチケ」が、本項で扱っている「厄介」に成長したか、同一性ないし連続性があるかは不明であるが、「ルールを破り、周囲の客に迷惑な行為を行う集団」の存在が2010年頃から認知されていた事を示す言葉である。

初期の厄介

辞書などで明確に定義づけられた事は無いが、2012年頃からネットユーザーの間で一定程度の概念が共有された上で、「厄介ヲタ」という単語を使った会話が成立するようになっていた。
最初の用例がいつかは不明であるが、1年毎に検索範囲を限定して「厄介 AKB」の検索結果上位にヒットするようになるのは、2012年頃からである。

ただし、同時期において「迷惑ヲタ」との表記も多数あり、その後も2020年に至るまで、「厄介」と呼ばれるクラスタは、様々な語彙で呼ばれていて、表現は一定していない。

2013年5月には、HKTのメンバーに対し、ネット上で集団レイプを予告した厄介に福岡県警が動いている事が週刊実話で報じられるなど、既に悪質な行為が表れていた。翌年の報道ではあるが、同時期にHKTのイベントで、ファンが別の女性ファンに怪我を負わせた事件も発生している。

2014年頃には、厄介と呼ばれる迷惑行為・暴力行為を行う存在は、AKBに限らず様々なアイドルグループに出現し、社会問題として報じられはじめるに至った。

「認知厨」「接触厨」「つながり厨」

「認知厨」「接触厨」「つながり厨」、それぞれの末尾にある「厨」は、「中学生」→「中坊」→「厨房」を語源とし、「子どもっぽい」「幼稚である」事を示すネットスラングである。
握手会でアイドルがファンに襲撃された事件後、2014年6月17日の産経新聞で、これらの用語が紹介された。
以下、産経新聞の記事からの引用である。
  • >「認知厨」
    • >気に入ったメンバーから顔と名前を覚えてもらうことを目的にするファンのこと。
  • >「接触厨」
    • >メンバーとの過剰な会話や握手を目的とするファン。アイドルとの接触は基本的に手のひらを合わせる程度で、腕を組んだり、肩を組んだりするのはNGとされる。しかし、接触厨の中には、どさくさに紛れて胸や尻などを触るセクハラ行為をする者もいるという。
  • >「つながり厨」
    • >アイドルと個人的に付き合うことを目的にする。
    • >アイドルたちの連絡先を聞こうとしたり、デートに誘ったりし、ときには付きまとうこともある。
  • >実際、アイドルがそうしたファンと個人的に連絡を取っていたことが分かり、脱退させられたとか、ファンと本当の恋仲になって辞めたなどの噂が流れたこともある。もっと悪質なケースでは、ブログやツイッターなどからアイドルの個人情報を割り出して、ストーカー行為に走るファンもいるという。
既に2014年6月の段階で、ウェブニュースやスポーツ紙のみならず、一般紙が取り上げる程に、アイドルグループの治安を脅かしている「迷惑ヲタ」「厄介」の存在が認知されていた事が解る。
NGT48のお披露目は2015年の事である。
つまり迷惑ヲタ・厄介の存在は、NGT運営にとり予見可能性があったどころか、グループ全体で既に「経験済」の危険因子であった。

「厄介」という呼び名の是非・代替案

2019年4月、精力的にNGT48暴行事件を取材していた朝日新聞記者小松隆次郎(@Kryujiro)氏が、「厄介」という呼び名について、ツイートを行った。

>新潟で複数のファンに聞いた話が事実なら、「厄介」という集団は騒いだり、メンバーを口説いたりといったことで迷惑をかけるレベルではないですね。組織的・計画的に狙いをつけ、弱みにつけこみ、脅す集団。その卑劣さは、「厄介」という言葉では、一般人には通じないと思います。何か新たな名称を。。
2019-04-23 01:04:57

これに対し、小松記者も驚くほどの反響があり、「こういう呼び名が良いのでは」といった「代替案」が多数寄せられた。その「代替案」のツイートも合せてまとめたものが以下である。
「悪漢」(←当サイト管理人も一時期使用していた)「凶謀集団」「半グレ」「半グレヲタ」「狂暴厄介」「アイドル詐欺集団」「愚連隊」といった提案がされ、一部では使われる向きもあったが、2020年10月現在では、「厄介」が定着して使われる傾向にある。

今村悦朗NGT48支配人

NGT48劇場支配人(事件当時)今村悦朗は、厄介に対して「あいつらだって一応ファンなんだから。心を広く持っていかないと。あいつらだってファンなんだから除外するだけじゃだめだよ。」などと述べ、厄介に対する甘い認識を示していた(詳細は今村悦朗を参照)。

厄介と呼ばれる者たちの存在が、先述の通り数年間に亘って問題になっていたのに、「あいつらだってファンなんだから」が、今村の認識であった。

NGT48暴行事件での3人の厄介

NGT48暴行事件における被疑者らも、「厄介」であった。
詳細は被疑者らを参照。

教訓・対策

AKS民事裁判は何の効果も無い

AKS(ヴァーナロッサム)が厄介2人(NGT48暴行事件の被疑者ら2名)に提起した民事裁判であるが、ただでさえ様々な問題が弁護士らから指摘されている(暴行犯と民事で和解した運営弁護士達による考察集)。
特に「出禁」などは、裁判を起こさずとも達成可能なものである。
そして民事裁判で相手とされたのは甲乙の2名のみであり、甲乙の協力者であった丙は含まれていない。

また、他の厄介には、この民事裁判は何の効力も影響も及ぼすものではない。それはこの民事裁判が問題にしたのはあくまでNGT48暴行事件にかかる事象のみであり、普段の「厄介」としての行動は殆ど問題にされていないからである。

AKSだけの問題では無い

  • 厄介はAKBGに限らず幅広く存在している
  • AKBGで迷惑行為・犯罪行為を行った人間が、他アイドルグループで犯罪を起こしている事例が実際に発生している
以上二点から、「厄介対策」が必要なのは、AKSとその後継企業にとどまらない。

厄介が沢山居るとの認識が重要

依然として安全面に対して大きな脅威として、厄介達はAKBグループ全体に存在している。

新潟県警、新潟県・新潟市といった自治体、そしてNGT48の運営会社Floraには、今後、これら厄介に対する、治安・防犯上の対策を講じる事が求められる。

さらに、厄介が、AKBG全体、およびAKBGに限らずアイドルグループ全てに対する脅威である認識の共有も重要である。 前述の通り、厄介はAKBGのみならず、メジャーアイドルから地下アイドルに至るまで、類似するショービジネス全体に存在している。
NGT48に起きた諸事件を、類似するショービジネスの関係者一人一人が、「他人事」とする事なく、教訓を引き出し、安全管理のための対策を講じる事が急務と言える。

事件時の情報共有の欠如

株式会社AKS第三者委員会は、
  • メンバーが一部で共有していた不審者情報を、運営(AKS・NGT運営)は共有しようとしなかった(第三者委員会報告書, 3(2)ウ)
  • 握手会を執り行うレコード会社と、AKSは、出禁対象者のリストを必ずしも共有していなかった(第三者委員会報告書, 3(3)ウ)
事を指摘している。

AKBGでは、専用劇場で出禁になったような人物が、大規模な握手会に出入りが可能になっていた。
さらに、その出禁対象者のリストを共有していない場合もあった。
握手会で傷害事件まで経験しているAKSが、このようなザル防犯を放置していた事には、責任感の欠如を指弾されてもやむをえない。

情報共有における課題・法的側面

効率的な防犯を行うためには、関係各所の情報共有が不可欠である。
  • メンバーと、運営
  • 運営と、イベント主催者やイベント会場スタッフ

これらが厄介(迷惑ヲタ)に関する情報を共有しなければならない。

「出禁対象者のリスト共有」については、個人情報保護の問題が絡んで来る。
したがって事前に
- 情報共有のルール・マニュアル作り
- 情報にアクセスする者に対する個人情報保護教育
といった準備が不可欠である。「イベント当日に簡単に済ませられる」対策ではない。

個人情報保護委員会は
>Q5−32−2 防犯目的のために取得したカメラ画像・顔認証データ等について、防犯目的の達成に照らして真に必要な範囲内で共同利用をすることは可能ですか。その場合には、どのような点に注意する必要がありますか。((PDF)令和元年6月7日 個人情報保護委員会
という問いを立てて答えを作成している。

法務の観点から専門家を交えた対策も重要である。

出典・資料

マスコミ記事「厄介」関連

厄介もしくはそれに準じる存在が起こした事件

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