NGT事件につき、第三者委員会報告書、マスコミ記事、メンバー達の発言、弁護士の見解等々を比較・整理し、何が「確かに言えること」かを整理します。


本項では、NGT48暴行事件における第三者委員会(正式名称:株式会社AKS第三者委員会)を扱う。

結論から言えば、本「NGT事件史」サイトでは第三者委員会報告書を大変有用かつ貴重な資料と判断して多用している。
しかしながら第三者委員会の在り方として見た場合は、欠陥が多々あったのも事実である。

本ページでは構成上、第三者委員会の一般論を概観してから、NGT48暴行事件における第三者委員会の成立過程と、どのような調査を行ったかを見た後、その不足・欠陥を述べた上で、当該委員会による当該報告書がそれでも使える理由を述べる形をとる。

※本ページでは、「当該第三者委員会」「当該委員会」と表記している場合、NGT48暴行事件における「株式会社AKS第三者委員会」(同委員会表記の正式名称)を指す。
※「当該報告書」との表記は、同委員会が作成し、2019年3月21日に発表された報告書を指す。
※単に「記者会見」「説明会」と書いている場合、2019年3月22日にAKSにより行われた「第三者委員会報告書説明会」(記者会見とも表記している事がある)を指す。
暴行の事実認定と根拠も参照。

第三者委員会とは(一般論)

日弁連ガイドラインでの定義

第三者委員会とは何かについて、日本弁護士連合会(日弁連)が2010年7月15日に策定(改訂 2010年12月17日)した、「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」から引用する(このガイドラインには拘束力は無いが、現在の第三者委員会のほとんどは、このガイドラインに準拠するか、意識したものとなっている〔2〕)。

>本ガイドラインが対象とする第三者委員会(以下、「第三者委員会」という)とは、企業や組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会である。
>第三者委員会は、すべてのステーク・ホルダーのために調査を実施し、その結果をステーク・ホルダーに公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とする。

「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」とあるが、「等」とあるのは、調査対象に国の機関や自治体も想定されているためである〔1〕

全ての利害関係者のため

ガイドラインで言うステーク・ホルダー(利害関係者)とは、株主、従業員、取引先、顧客、地域などを含め、企業を取り巻くすべての利害関係者を指す〔1〕

基本的に普段、弁護士は依頼者のために働く〔1〕

一方、第三者委員会は、オールステーク・ホルダー(すべての利害関係者)のために調査を実施し、調査結果を公表する〔1〕
その結果、一時的に企業にとりダメージとなるような調査結果であっても公表する事が求められるが、一時的にダメージになるとしても、最終的に企業等の信頼を回復し、持続可能性を回復し、さらにはマーケット(市場)の信頼を守るのが、第三者委員会の使命である〔1〕

「真の依頼者」と「名目上の依頼者」という言葉がガイドラインのはしがきに登場するが、例えば名目上の依頼者が会社である場合、真の依頼者は投資家を含めたステーク・ホルダー全体であると位置づけられる〔1〕
第三者委員会の直接の依頼者は企業や自治体、あるいはその長であるが、第三者委員会には「名目上の依頼者のため」を越えて、地域社会に至る全ての利害関係者のために調査を行う点で、「依頼者のために働く」普段の弁護士の業務とは異なる性格がある〔1〕

また、第三者委員会に報酬を出し依頼をするのは「名目上の依頼者」であるが、第三者委員会の「真の依頼者」はステーク・ホルダー(利害関係者)全体」である所に、構造的なズレがある。

第三者委員会ガイドラインには、弁護士の基本的な在り方にも及ぶ性質もあったため、策定にあたっては、日弁連内でもかなり議論が生じた〔1〕

弁護士法1条1項は「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」とする。
刑事弁護人のように「被疑者のために働く」という社会正義の実現もあれば、「一企業の信用だけでなく、市場の信頼という公益を守る」という社会正義の実現もあるというように、いくつもの社会正義の実現のやり方があり、第三者委員会もその一つであるとされる〔1〕

問われる名目上の依頼者の姿勢

日弁連策定のガイドラインがあるとは言っても、先述の通り拘束力は無い。
真の信頼回復を望み、ガイドラインに忠実に従い第三者委員会を設置し(設置方法や態様も適正かどうかが問われる〔4〕)、第三者委員会の調査に積極的に協力し、調査結果の公開を正面から受け止めるか。
あるいは第三者委員会を「隠れ蓑」とし、体裁を整えるための道具に落とすか。
それは「名目上の依頼者」(企業、役員、自治体、首長)の意思と行動にかかっている。

第三者委員会をどう設置し、それにどう向き合うかで、企業に自浄能力があるのかどうかもあからさまに問われる事となる点を、久保利弁護士は「恐いところ」と評している〔4〕

質はピンキリ

第三者委員会の質もピンキリである。
第三者委員会とその報告書に対する信用を高めるために、第三者委員会報告書格付け委員会が発足している〔6〕のも、第三者委員会と名のつくものが全て質が高い訳では無いからである。
格付け委員会が低い格付けをしている事例も多い(最低ランクの「F」評価は数多くある一方で、「A」を獲得している報告書は格付け委員会内では2つ、それも票数で言えばそれぞれ1票ずつしか無い〔7〕)。

日弁連の第三者委員会ガイドライン策定の中心人物の一人である久保利英明弁護士は、第三者委員会報告書格付け委員会の委員も務めており(委員会について | 第三者委員会報告書格付け委員会)、NGT48暴行事件の当該第三者委員会に対してもコメントを求められ、これに応じている〔4〕
久保利弁護士は、本事件における当該第三者委員会につき、報告書発表前の設置の態様から、報告書の発表に至るまで、厳しい評価・批判をしている(後述)〔4〕

当該委員会委員の独立性

利害関係の独立性

AKS(現ヴァーナロッサム)は、当該第三者委員会立ち上げの2019年2月1日に、当該委員会を構成する弁護士3人を発表した(マイナビ2019/02/01)。
  • 委員長:岩崎 晃 弁護士(岩崎法律事務所)
  • 委員 :木内雅也 弁護士(赤坂森の木綜合法律事務所)
  • 委員 :盪魁‐拭(杆郢痢平刃汰躪臻[Щ務所)

この3人につき、AKSは
>日本弁護士連合会による「第三者委員会ガイドライン」に沿って選定しており、各委員は当社との利害関係を有しておらず、本委員会の独立性を阻害する要因はありません。
と発表した〔5〕
委員会も「(委員達は)AKSと特別な利害関係を有していない。」としている〔8〕
委員の一部が「○○社の顧問弁護士であるから利害関係が怪しい」云々との風説がネット上で流れたが、サイト管理人がネット上で検索をした範囲では、そうした事実は確認できなかった。
きちんとした根拠があれば事情は変わるが、仮に根拠無くそうした風説を流すとすれば、名誉毀損に該当するリスクがある事には注意が必要である。

広報・説明の独立性

当該第三者委員会が設置された際、当該委員会が記者会見を開くのかと一部では捉えられたが、当該委員会からのアナウンスは一切無かった。
当該委員会委員長の岩崎弁護士に取材を試みた東洋経済記者は、「この件に関してはこちらでは何も話せません。取材の可否など含め、すべてAKSさんを窓口にしていますので、そちらにお尋ねください」と弁護士事務所から回答された〔4-2〕

久保利弁護士はこの「当該第三者委員会がAKSを窓口にした」点につき、「独立性も何もあったものではない」「その時点でアウト」と、報告書の発表前(2019年3月5日記事)に手厳しい批判をしている〔4-2〕

2019年3月22日に行われた、第三者委員会報告書説明会(正式名称では記者会見では無く説明会とされた)でも、会見に臨んだのは松村匠AKS取締役、早川麻依子NGT48劇場支配人、岡田剛同副支配人の3人であり、当該第三者委員会の委員は同席すらせず、記者達の質問を受ける機会も無かった。

選任プロセス

久保利弁護士は、「誰がどのように委員を選定したか明らかにしなければ、委員会の信頼性は薄い。」と述べ、選任プロセスに疑問を呈している〔4-2〕

時期にも疑問がある。
最初に松村匠AKS取締役(当時)が「第三者委員会を設置する」と述べたのは2019年1月14日、神田明神での成人式後の立ち記者会見である。
この時松村匠は「(委員会のトップの)候補の方はいらっしゃいます。」「早急に取り掛かり、なるたけ早い結論を出していかなきゃいけない。」「メンバーに関わることなので早急にスタートさせ、迅速に行いたいですが、丁寧に行っていきたいです。」と述べている(モデルプレス2019.01.14)。
翌週1月23日(水曜日)に、松村匠は「週明けに第三者委員会が発足する」旨を新潟日報に述べた(この時点で9日経っている)。
「週明け」とは普通、日曜(同年1月27日)〜火曜(同29日)のいずれかを指すと思われる。
だが実際の設置は同年2月1日(金曜日)まで遅れた(当時のネット上での反応まとめ)。

さらに2019年1月14日、AKSは神田明神(東京都千代田区)のAKB48グループ成人式に集まった報道陣に向けて、急きょ会見し、その際に「弁護士や有識者で構成される第三者委員会の設置を発表」したが、実際に選任された委員は弁護士のみであった〔9〕
1月14日から、委員会が発足した2月1日までの間に、AKSにどのような方針の変更があったのか、その説明も無かった。

AKSに有利・その他

なお、「AKSが窓口となった」「委員の選定が不透明であった」の両方とも、「AKSに対して不利に働く問題」ではなく、むしろ「AKSにとって有利な結果となったのではないか」との疑義が持たれる性格のものであり、これらの問題から「報告書に書かれている内容はAKSに対して不利である」と評価する事はできない。
逆に「当該第三者委員会報告書は、AKSに対して比較的有利な内容なのではないか」と疑義を持ち得る要因である。

また、これは委員およびその選定の問題では無いAKSの問題になるが、発表した日付も、「週明けに設立の発表をする」などとAKSが言っていたものが、2月1日(金)までずれ込んだ事にも批判があった。

設置の経緯の不記載事項

社内調査

第三者委員会は、大概の場合、「世間からかなり信頼を失っている企業が、短期的なダメージを覚悟の上で、第三者委員会に厳しい調査をしてもらい、自社の長期的な信頼回復を図るための手段」であり、その前に社内調査を経ている事が普通である。
そうした「社内調査の経緯」「社内調査で分かった大枠の事実」が、一般的には第三者委員会報告書の「設立経緯欄」には書かれている事が多い。
どこまでが社内調査で分かっていたことかを明記しなければ、第三者委員会の調査結果と社内調査の結果の違いも述べようがない。

ところが、株式会社AKS第三者委員会の報告書には、社内調査の概要やその結果が、全く書かれていない。

報告書内では
第2 2 (5)ウ(ア)
>上記イに記載したようなメンバーとごく一部のファンとの私的領域における接触、いわゆる「つながり」については、前支配人あるいはマネージャーが一定の範囲で認知していた(他のメンバーから伝え聞いた場合なども含む。)と思われるところ、1件については、調査は行ったようであるが正式な処分はなされていないし、それ以外の事案については、積極的に調査や対応を行っていた形跡は認められない。
第2 3 (3)エ(エ)
>特に、ファンと私的領域において接触した(「つながり」をもった)メンバーの処遇については、「証拠がない」とだけ言って、申告を排除し、それ以上、調査を行わずにいたようであるし、

といった記述がある。
上記記述は「つながり」についての調査に限定した内容ではあるが、少なくとも「つながり」について運営は「積極的に調査していない」。
そして報告書内には他に「別の視点からは運営が調査を行っていた」旨の記述は無い。
「これほどの大事件にもかかわらず、AKS・NGT運営では、社内調査自体が碌に行われなかった」と見るのが妥当だろう。

被害届について

当該報告書の短い「設置の経緯」箇所に於いて、「山口真帆氏が…新潟県警警察に対し被害届を提出した。」とあるが、
  • 松村匠AKS取締役(肩書当時)は「被害届は出して居ないと認識している」と、2019年3月22日の記者会見で述べた(マイナビ2019/03/23)。
  • 今村悦朗元NGT劇場支配人は「新潟署では翌日の早朝4時半頃まで事情聴取が続き、被害届も提出しています。後になって僕が被害届を取り下げさせた事実もありません」と、2019年5月30日号掲載の週刊新潮で述べている(デイリー新潮(2019年5月30日号))。
それぞれ矛盾している。
AKS(特に松村匠)は当該第三者委員会報告書をまともに読んでいなかったのではないかという疑問を持たれても仕方ない。

目的・委嘱事項

当該報告書における記述

株式会社AKS第三者委員会が何を目的とし、何をAKSから委嘱されたか。
当該委員会は報告書に下記のように記している。

>2 本委員会の目的
>本委員会は、AKSからの依頼に基づき、調査及び報告の対象を以下の事項(以下「委嘱事項」という。)とし、調査結果をAKSに対し書面にて報告することを目的としている。なお、本委員会が、委嘱事項を遂行する上で、さらなる調査が必要と認めた一切の事項について調査を実行することも、委嘱事項とされている。

>【委嘱事項】
>*下記事案の事実関係、会社関係者の関与の有無、程度、直接、間接の発生原因の調査(以下「調査」という。)
>平成30年12月8日に新潟市内において発生したAKSが運営するNGTのメンバー山口氏に対する暴行事件(以下「本件事件」という。)

委嘱事項の是非

「会社関係者の関与の有無、程度」が入っている。
この「会社関係者の関与の有無、程度」を、AKSが特に入れた事が適切かどうかは判断が難しい。
調査事項の焦点を「事件に関与したかどうか」であると、AKSが予め設定している、と見る事も可能ではあるが、マスコミの関心がそこに集まっていた情勢を考えれば、(法律用語ではなく一般的な意味で)悪意は無い依頼であるとも捉え得る。

しかし、委嘱事項は「一方的に、名目上の依頼者によって決まる」とは限らない。
「優れた第三者委員会報告書表彰委員会」が「優れた調査報告書」として表彰している(表彰発表PDF)、「株式会社 UKC ホールディングスの設置した第三者委員会による調査報告書」(PDF、公表日:平成29年7月19日)は、異なる経緯を辿っている。

暫定的な委嘱事項(調査スコープ)の下、第三者委員会が調査を開始した後に、監査法人と情報交換をした上で、正式な委嘱事項をUKCホールディングス株式会社に提示。同社はこれに同意し、正式な委嘱事項が定まっており、そうした経緯も報告書で公表されている。
第三者委員会の独立性は、委嘱事項にまで及ぶという一例である。
だが、これはあくまで「表彰」されるほどの「優良な」第三者委員会(と、善意と良識ある依頼者 株式会社UKCホールディングス)の事例である。

例えば関西電力株式会社における第三者委員会報告書(2020年3月14日発表、PDF)では、関西電力が調査事項を委員会に示して委嘱しており、委員会は委嘱事項の決定自体に関わってはいない。
それでもこの報告書は第三者委員会格付け委員会で、5名の委員が「B」、3名の委員が「C」と総合点を付けている(ABCDの4段階評価であり、Fは「落第」の意)。
格付け委員会の評価は大変厳しく、全委員が「F」評定を下す事例もある事を鑑みれば、総合的には「良くは無い」が「最悪でも無い」評価を得てはいる(同サイト内「格付け結果」参照)。

但し、格付け委員会からは、関西電力の上記第三者委員会報告書につき、調査スコープ(調査事項)については複数の委員から厳しい評価もされており、調査事項があまり拡げられていない事は、減点要因になっている事には注意が必要である(第22回格付け個別評価(PDF))。

当サイトでは、下記4点を指摘して節を終える。
  • 株式会社AKS第三者委員会への委嘱事項は、AKSが一方的に定めていると思われる(少なくとも報告書には委員との間で話し合いが行われた旨の記載は無い)
  • 「事件関与の有無」と特に指定した事は適切であったかは判断が分かれる論点
  • 委嘱事項について、第三者委員会格付け委員会が高く評価する事例では、委員会側が改定を提案し、企業側と合意に至っている
  • 委嘱事項を依頼者が一方的に指定する事まではよくある事で、そうして作成された報告書が格付け委員会から「B」「C」の格付けをされる場合もある(ただし調査事項を拡大しない事は格付けにおいて減点要因となり得る)

※参考資料:第三者委員会ドットコム

AKS、越谷市に第三者委員会の調査範囲を説明

株式会社AKSは、2019年2月13日14時〜16時、越谷市観光課の副課長と職員1名ずつをAKS社屋に迎えて説明を行っている(情報公開された越谷市の文書)。
これは荻野由佳が越谷市の魅力宣伝大使に任命される案件に絡むものである。
事件露見後の時点であり、会談の内容からしても、AKS側が即刻越谷市役所を訪れるべき所であるが、なぜAKS社屋での会談になっているのか。AKSが呼びつけたのか、越谷市側から訪ねたのかは不明。

その会談の席上、AKS側は「警察が年末に容疑者を不起訴として釈放していることから、事件の違法性等について改めて第三者委員会で究明する事はない。」と、越谷市職員に対して述べている(情報公開された越谷市の文書)。

第一の問題。
第三者委員会においては調査スコープを依頼者側が一方的に決めるものではなく、委員会が調査事項を拡大する事もあるのは上述の通りである。
同年2月1日に発足した当該委員会が調査対象を拡大する可能性は理論上は存在した。
しかしAKSは、「委員会が究明する事は無い」と断言している。
これは第三者委員会について無理解であるか、最初から当該第三者委員会の調査スコープにつき、主体性を許していなかったかのいずれかであり、いずれにせよ問題である。

第二の問題。
「不起訴だから事件の違法性を調査する必要が無い」という認識を株式会社AKSは示している。
例えば娘が自宅玄関で襲われた親が居たとして、容疑者が不起訴になったとしても、親は「本当に不起訴で良かったのか」など、自分でも調査をするのが普通であろう。
そもそも不起訴処分は無罪ではない(当サイト内ページ:不起訴処分も参照)。
だがAKSは「不起訴だからそれで終わり」として、4470万円もかけて設置した当該委員会の調査対象に、「事件の違法性」を入れない旨、越谷市に報告。
よく読めば「事件には違法性が無かった」認識まで述べている。
これはもはや第三者委員会としての是非以前に、若い女性を預かる会社として、異様であると言わざるを得ない。

どういう調査をしたのか

NGT48暴行事件における当該第三者委員会は、調査方法も当該報告書に記している。
以下、当該委員会が当該報告書に記した調査方法につき詳述する。

当該委員会が調べた資料

当該委員会が調べた対象のうち、物品は以下の通りである。
  • AKSが所持する資料
    • ア 会社組織、NGTメンバー等に関する資料
    • イ 本件事件に関する資料
    • ウ その他メンバーとファンとの接触状況に関する資料など

書面回答による調査

当該委員会はNGTメンバー38名を対象に、書面回答による調査を行っている。
  • 目的:面談による事情聴取のため、メンバー達の本件事件自体のみならずその背景事情等に対する認識を把握する事

全メンバー41名のうち書面回答に応じたメンバーが38名となったのは、兼任メンバー1名、山口真帆さん、発熱で参加できなかった1名が参加していないためである。
当該委員会報告書では「兼任メンバー」とだけ述べられ氏名は記述されていないが、「AKB48との兼任メンバー」の該当者は柏木由紀さんだけである。
  • 質問内容:本件事件及びその背景事情等に関する認識の有無等
  • メンバーを4か所に分けて概ね30分程度の時間で実施。
  • AKS関係者は一切同席していない。
  • 非公開、AKS関係者にも開示しないことが前提
  • 記名するか否かは選択できるものであることを告知した上で実施

その結果、記名者24名、記名しなかった者14名であったが、そのいずれにおいても、対象者は、真摯に回答を記述していた。

当該委員会は「回答が記載された書面及び記名、無記名の者が特定できる資料は、AKSを含め本委員会以外には一切開示しない。」としている。
仮に「メンバーの誰々がこのように記述した」といった「情報」が出たら、書いた本人が漏らしたか、当該委員会から情報が漏れたか、デマかガセである。

書面回答による調査の着眼点

まず、書面調査はメンバーのみが対象となっており、スタッフ、会社役員らは対象となっていない。
第三者委員会は普通「会社を調べるもの」であるが、スタッフや役員に書面調査をしなかった理由は記されておらず、不明である。

第二に、記名して回答したメンバーが意外に多い。
事件というナーバスな場面で、無記名も選択できるのにあえて記名する覚悟があったメンバーが38名中24名(約63%)居た事、メンバー全体の約3分の2が「書面調査に記名で覚悟して向き合った事」は、NGT48メンバー達の名誉のために記すべきだろう。

面談による事情聴取

事情聴取をした相手:本件事件当時のメンバー42名、AKS役職員24名、メンバー及びAKS役職員以外14名の合計80名
  • 事情聴取の方法
    • 委員ないし補助者の2名が一組(メンバーが相手の場合は2名のうち1名は女性)で、委嘱事項と関連事項について、任意の供述を求める形で実施
    • 事情聴取を実施した際に、各対象者の供述内容を裏付ける資料等がある場合は、その提出を求め、提出された資料は形式を問わず、調査の対象とした

面談による事情聴取の着眼点

書面による調査の対象には役員やスタッフは入って居なかったが、面談による事情聴取は行われている。

委員の性別は明記されていないが、氏名から推測するに男性2名、女性1名であり、補助にあたった弁護士10名が男性5名と女性5名。この内女性6名が、メンバー相手の事情聴取の場には居た事になる。

事情聴取の際に、「供述内容を裏付ける資料」の提出が行われた事が分る。
ただし、その規模や内容を、委員会は明らかにしていない(それ自体は必ずしも責められる事では無い)。

インターネット上の情報検索とその着眼点

当該委員会はインターネット上の情報検索も行っている。
その対象として挙げられているのは
「掲示板」「各種まとめサイト」「SNS」「各メディアの報道記事等」
である。
掲示板やまとめサイトという、一般的に信用性が相対的に低いとされる情報までも、当該委員会は調査し、信用性については独自に評価したとしている。

これによってどの程度、有効な調査を当該委員会ができていたかは不明であるが、インターネット上の情報を無視はしていないこと、当該報告書にもその旨が記述された事は、留意すべきであろう。

被疑者らに対する調査

AKSは被疑者ら(甲、乙、丙)に対して、委員会による調査に協力するよう、書面で求めた(平成31年2月22日および同月25日に配達された)。
その後、丙からAKSに連絡があり、自らの出禁についてAKSが交渉に応じることを提示してきたが、AKSは断った。

その後、委員会が甲、乙、丙に対して、平成31年3月1日付で委員長名義で、協力を求める書面を送付したが、3名から返答は無かった。

被疑者らに対する調査での着眼点

なぜか委員会よりもAKSが先に、被疑者ら甲、乙、丙らに、委員会の調査への協力要請を行っている。
委員会の独立性の疑義が生じる行動である。

また、丙が自らの出禁について交渉を求めたとあるが、この時点で既に丙は「出入禁止(AKBグループ全体への出禁か、NGT48のみの出禁であるかは不明)」になっていた事が分る。

委員会が被疑者らに対して書面を送付したのは平成31年3月1日付であるが、2月1日に発足、3月21日に報告書が公開された委員会にしては、少々書面送付自体が遅いとの印象も受ける。
しかも委員会による文書送付は一回きりで終わっている。

もとより調査への協力など望めないのだから仕方ない、という見方も可能かもしれないが、それでも調査に応じるよう説得(例えば「調査に応じない方が言い分が述べられず不利になる」と述べて説得するなど)した形跡がみられない。

委員会は、被疑者らを調査する意欲に乏しかったか、もしくは被疑者らが調査に応じるわけがないと踏んでいたか、被疑者らを調査しても誠意ある回答は期待できないだろうから無駄である、と考えていたか、あるいはそれ以外か。

ただし、この「被疑者らが調査に応じなかった」ことで「被疑者らの言い分が盛り込まれて居ないから被疑者らに不利な内容となっている」と捉えるのは誤りである。
経緯に疑問があるとはいえ、AKSと委員会の両方から調査への協力を求められ、これを断ったのは、被疑者らの無責任さを示すものである。
また、折角与えられた言い分を述べる機会を無にしたのは、被疑者らであり、その不利益は被疑者らに責任がある。

※山口真帆さんはAKSが暴行犯らを訴えた民事訴訟において、暴行事件の当事者であるにも関わらず、言い分を述べる機会も与えられなかった(民事訴訟では訴訟の当事者が呼ばなければ、第三者が法廷で証言する事はできない)。AKSは被疑者らには言い分を述べる機会を与え、山口真帆さんには言い分を述べる機会を与えなかったことになる。

現地調査・握手会視察

当該委員会は、
>(ア) 本件事件の現場であるマンション (イ) NGT48劇場 (ウ) メンバーの移動経路、降車ポイント等
を実際に視察している。

また、
>ウ 握手会視察
を行っているが、これは「他のグループの握手会」である。そこでは
>握手会の警備体制、運営状況、ファンの動静その他会場の状況
を確認したほか、
>主催者であるレコード会社所属の担当者から聴き取りを行った
とする。

「調査の限界」

当該委員会は、調査の限界として、
>本調査は、いわゆる捜査機関が行う捜査と異なり、捜索・差押え等の強制処分を行うことはできず、それゆえ、これらを用いた、あるいはこれらを背景としたものではない。

>また、本委員会における面談による事情聴取では、訴訟における証言と異なり、偽証に対する制裁はなく、対象者が真実を供述する客観的な担保はない。

としている。

実際、当該第三者委員会の言う事がそのまま正しいとする事は出来ない事は弁護士 岡野 武志 先生が動画で解説しているほか、「事件の真相は(民事裁判の結果を受けても)分からない」事は、弁護士 高橋 裕樹 先生が動画で述べている(【何のための裁判だったのか】違和感ばかりのNGT暴行損害賠償請求裁判 そのポイントと理由を弁護士が徹底解説!!(2020/04/19))。

当サイトも、当該第三者委員会報告書を絶対視するものではない。

調査結果

委嘱事項との関係もあるが、当該委員会は、「委員会が認定した事実」を2つの項目にまとめている。

>第2 調査結果
>1 本件事件について
>(1)事実関係の特定
>(2)本件事件へのメンバーの関与の有無

上記(1)では、事件を巡る事実認定について述べられている。
詳細は暴行の事実認定と根拠を参照。

(2)では、メンバーの関与の有無が述べられている。
詳細は「つながり」についてを参照。

ただ、当該委員会が事実として記述しているものは「1 本件事件について」だけでは無い。

>2 本件事件の背景事情
>3 発生原因と対処

においても、かなり詳細かつ多量の報告がなされている。
その中では、支配人やマネージャーの、権限や役割の曖昧さといった体制面の課題が批判的に指摘されているほか、支配人やマネージャーの普段の言動も批判の対象となっている。
詳細は今村悦朗厄介なマネージャーを参照。

当該報告書の欠点・欠陥

つながりの定義が曖昧

当該報告書では、キーワードの一つに「つながり」がある。
だがその内容を明確に定義づけている記述が無い。
弁護士が作った文書とは思えないほどである。

一方で

>ファンとの私的領域での接触、いわゆる「つながり」は、前記2(5)ア「専属契約とメンバーの意識」に記載したとおり、所属タレントとしての「自覚」と「責任」の名において禁止されているのは自明であって、握手会はメンバーの芸能活動の場面とはいえ、私的領域での接触を求めるような会話は当然に許されるべきものではない。

とも述べて、「つながりは当然禁止」という当該委員会の姿勢は明確にしている(定義をせずに評価をするのも疑問符は付くが)。

また、

>私的領域でのファンとの接触は禁止されていたものの、ごく一部のファンによる働きかけに対して、一部のメンバーは、私的領域における接触(いわゆる「つながり」)を持っていたことが、本件調査の中で、「噂」レベルではなく、具体的な事実として垣間見ることができた。(その後事例列挙)
>複数のメンバーが被疑者らのグループと私的領域で接触していたことも窺われる。

など、「推測に過ぎない」とは言えないレベルでの当該委員会の記述がある。

なお、AKS取締役(当時)松村匠は2019年3月22日、記者会見で「つながりには挨拶も含まれる」として、「全員不問」の根拠としたが、当該報告書には「あいさつ」「挨拶」という語彙は無い。
そもそも当該報告書では(明瞭な定義は無いとはいえ)「つながりは禁止されているのは自明」としており、当該報告書が述べている「つながり」を「挨拶も含まれる」と解釈するのは無理がある。

山口真帆さんは、3月22日AKS記者会見時、リアルタイムで「報告書に記載もないのに繋がりには挨拶も含まれるというのは勝手な解釈です」とツイートし反論。
目に見えて狼狽えた松村匠は数分間、無言で報告書のページを手繰った後で、「私的領域でつながること全てっていうのは、例えばあいさつっていうことも含まれるんだなっていうふうにちょっと僕が認識していたということでございます。勘違いというか、そうですね、認識してしまっていたということでございます。」と釈明した(第三者委員会報告書説明会記事(THE PAGE))。

また後述するように、

>(今村支配人は)つながりをもったメンバー処遇を『証拠が無い』とだけ言って申告を排除し、それ以上調査をしていなかったようである

という衝撃的な記述は、「つながりはあった」事を前提にしている。

こうして、「NGT48には、内実はよく分からないが、弁護士達の委員会が『禁止されて当然』とする、ファンとのつながりがあった」「暴行犯らとつながっていたメンバーが複数いた」とまでは、当該報告書を根拠にして述べる事ができる(但し当該報告書は、「ここまで書いているのに何故」と思えるほど、「完全な断言」は避けている)。

前支配人今村悦朗について

当該報告書でも、前支配人(今村悦朗)についてはかなりの分量が割かれてはいる。

だが「支配人」の単語は全て「第2 調査結果、2 本件事件の背景事情、(2)NGTについて」以降にのみ登場。事件発生日に支配人が何をしていたかは一切事実認定していない。

これは異様である。

まず、当該報告書は支配人の責任を軽視していない。

>発生した事象の詳細を正確に理解せず、あるいは、他の事象への対処との均衡を必ずしも正確にはかることなく判断を行っていると、メンバー、あるいはマネージャー等スタッフから評価されることが多かったようである。(〔8〕「(エ)支配人の役割の明確化」より)

>また、上記のとおり前支配人を指揮監督する役員等に関する具体的な規定がないため、前支配人自身も誰にどのように相談すればいいかわからないまま、自らのみで判断せざるをえない状況が多く生じていたと思われ、メンバー、あるいはマネージャー等スタッフから、この点を捉えて独断していると評価される場面もあったようである。(〔8〕「(エ)支配人の役割の明確化」より)

>特に、ファンと私的領域において接触した(「つながり」をもった)メンバーの処遇については、「証拠がない」とだけ言って、申告を排除し、それ以上、調査を行わずにいたようであるし、逆に、「証拠があれば処分するのか」との問いかけに対して、前記のとおり、契約上、簡単には解除ができないし、何らかの処分権限が認められているわけではないにもかかわらず、「処分する」と回答するなど、その場しのぎの対応をする場面もあった。このような場当たり的な対応が行われてきたことが、一面では行き過ぎたファンの活動を助長し、一面では、メンバーのファンとの私的領域での接触を持ってはいけないという自覚・意識を希薄にさせる要因となった可能性も否定できないところである。(〔8〕「(エ)支配人の役割の明確化」より)

>これらは、支配人の個性により生じている部分も全く否定することはできないが、それ以上に、支配人の職務内容、権限、指揮監督者などが具体的に定められていないことが原因であったと評価すべきである。(〔8〕「(エ)支配人の役割の明確化」より)

など、決して支配人を好意的に評価していない。
部分的にはかなり驚くほど批判的な記述もしている。

特に「つながりをもったメンバー処遇を『証拠が無い』とだけ言って申告を排除し、それ以上調査をしていなかったようである」は、衝撃的ですらある。

その支配人の仕事ぶりは、支配人の権限が不明瞭であった事に由来している事も随所で強調しており、支配人個人を批判する色は必ずしも強く無いが、いずれにせよ「支配人が良い働きはしていなかった」ことを、当該委員会は認識している。

にもかかわらず、「事件当日・翌日に」支配人が何をしていたかの記述は、当該報告書においてゼロである。
事件当日、公園に居たスタッフについては、当該報告書では「マネージャー」と明記されており、「支配人」を含み得る「スタッフ」とは書かれて居ない。

つまり当該報告書を読むだけでは、事件当日および翌日、今村悦朗が何をしていたか、何を考えていたのか、全く分からないのである。
夜だから早めに寝ていた、とでもいうのか。
いずれにせよ、後日この点についても今村悦朗がデイリー新潮に独占インタビューに応じてはいるが、少なくとも当該報告書では、今村悦朗の行動についての記述が全く無い。

「会社を調べる」「依頼者を調べる」事を基本とする第三者委員会が、「事件当日・翌日の行動」については、一部メンバーと、一部マネージャーの行動の事実認定しかしていない。
部長クラスと位置付けられる支配人だけではない。
1月から表に出て居た松村匠取締役、吉成夏子代表取締役が、事件当日や翌日に、何を考え、どこでどう行動していたのかが、まったく記述が無い(「取締役会」節で後述)。

当該委員会は支配人の権限の明確化を訴えており、それは妥当な主張であるが、支配人今村悦朗が事件当日何をしていたのかの記述が一切無いのは、バランスを大きく欠くと言わざるを得ない。

普段の支配人の言動については相当衝撃的な内容まで書いている当該委員会が、何故「事件当日・翌日の今村悦朗の行動」だけ「一切触れない」姿勢となったのか、理由は不明である。

向かいの部屋について

本件暴行事件において、普段、廊下に誰も居ない事を確認して急いで自室に入る程用心深い行動をとっていた山口真帆さんが、玄関で襲撃を受け暴行を受けたのは、「Bが以前住んでいた向かいの部屋から男達が出て来て急襲した」事が重要な要因である。
「離れた階段などに潜んでいて襲う」形などであれば、山口真帆さんは部屋に無事に入れていたかもしれない。

つまり「向かいの部屋を男達がどのように確保出来たのか」は、本件事件の重要なポイントであり、NGT48の防犯体制を評価するにあたって重要な項目でもある。

当該委員会は、向かいの部屋につき、「Bは数か月前に退去」していた、「甲が貸借」していた、としている。
当該委員会は「ウェブサイト上でマンスリーマンションの賃貸募集が行われているから、借りる事は可能」とし、事件直後の甲の録音データだけを元に「甲は部屋を借りていた事を認めている」としている。

驚くべき事に、当該委員会はBが居住・退去した際の「契約書」を確認していない(仮にしていたとしても当該報告書に記述していない)。
向かいの部屋の賃貸借契約をB個人が行っていたのか、運営が行っていたのか、その違いで運営の責任の軽重は大きく変わるが、その観点からの検証も一切行っていない(あるいは書いていない)。

「当該委員会の調査にも応じない暴行犯がそう言うのなら、そうなのでしょう」
これが当該委員会の結論である。

大きな穴の一つである。

参考記事:NGT48寮の山口真帆の「向かいの部屋」を貸したのはメンバーでも不動産屋でもない?

厄介なスタッフについて

当該委員会は、NGT48暴行事件当時の録音データにつき、

>(ア)録音データ
>本件事件に関しては、複数の録音データ(いずれも事件当日のもの)が存在する。

としている。また、各所でこの録音データからの書き起こしを盛り込んでおり、委員達は録音を聞いたと思われる。

だが、事件当日、事件現場に来たマネージャーの不審な言動については、当該委員会報告書は一切記述していない。

公開された録音データを聞けば分かるが、当該マネージャーには不審な言動が多過ぎる。
  • 暴行犯に対する怒りが一切感じられない。
  • 当該報告書からも分かる通り、「(ウ)本件事件後の状況について」で述べられている通り、最初マネージャーは山口さんとM子さんから、「犯人らに気付かれないように待機していて欲しい」と要請され、マネージャーも応諾したにも関わらず、前言を翻してマネージャー3名がマイクロバスで到着している。何故マネージャーらは(真相究明のために暴行犯らを問い質したかった)山口さんらの要請に応じなかったのか。
  • 警察には「シンプルに言いますと、単純に彼女のマンションの中に入って、自分の部屋に入ろうとしているところでいざこざがありました。言った言わないやったやらないの話になっているので」(該当箇所)「この2人がシンプルに言うと彼女の住んでいるマンションに入りまして、彼女がそのマンションの自分の部屋に入ろうとしたところ、ま、手を掴まれたりしたっていう」(該当箇所)などと述べ、被害者の言い分と暴行犯の言い分を同列に扱い、暴行の態様まで完全に否定(この時、山口真帆さんは「手じゃないです、顔を掴まれました」「私の顔からDNAとって下さい。指紋取って下さい。傷もついてます」と述べている:該当箇所)。

言うまでも無いが、中立的観点から捜査すべきは警察であり、マネージャーはアイドル側に立って警察に説明するのが筋である。
このマネージャーにはアイドルを守るのが仕事であるという自覚が一切無い(あるいは「Cを守る」という動機が先立っている)。

録音には以下のような会話もあるが(該当箇所)、犯人が自ら事件の背景にある事情を語ろうとしているのに、それを途中で遮るなど、真相究明をむしろ妨害しようとしているようにしか聞こえない。
  • スタッフ:要は、ほかのメンバー今、名前が挙がってきているけど、D子であったりC(録音では実名)であったり連絡をしたということはないね? 
  • 甲:今日具体的にっていうことはないですけど、こういうのって1年以上前から続いてることなんで。
  • スタッフ:別にその辺はどうでもいいんだ。正直僕が今知りたいのは。
他にも「(暴行犯がCの連絡先を)知っている知って無いはいいよ」(該当箇所)と述べているが、そもそも自社アイドルの個人的連絡先について「(暴行犯が)知っている知って無いはいいよ」とは異様である。
「いいよ」で済まされない問題をあっさり通している。

この非常識かつ不審なマネージャーを、当サイト管理人は「厄介なスタッフ」「厄介なマネージャー」と呼んでいる(関連まとめ:暴行犯に寄り添う、NGT48の厄介なスタッフ)。

当該委員会もマネージャーの行動が上記のように不審である事は気付いていた筈である。
当該報告書でも「(ウ)本件事件後の状況について」で、
  • 「『暴行犯らに気付かれないように』との山口さん達からの要請を応諾」
しているにも関わらず
  • 「マイクロバスで堂々到着」
が、何の接続も無く書かれている。

法廷で微妙な事実関係の機微で争う弁護士という職にある当該委員3名が、このような「接続無き矛盾した言動」をそのまま書いたのは、「整合性ある説明をする事は不可能」であると匙を投げたのではないか(投げやりだったのでは)…と推測するのは、乱暴では無いだろう。

しかし「第三者委員会」としては、「さじを投げる」ではなく、「マネージャーがなぜこのような奇妙な行動をとったのか」について、掘るべきであっただろう。

事件時の録音と矛盾は無いため、虚偽は書かれて居ない。
だが接続を欠いた矛盾ある記述が放置される不足がある形となっている。

なお、この厄介なスタッフ(厄介なマネージャー)の不審な言動に疑問を呈する内容を含む記事をwezzyが書いている(「NGT48はなぜ、寮内でのメンバーと男らの密会を頑なに認めないのか」wezzy2019.09.20)。

取締役会について

既述の通り、本来第三者委員会というものは、「依頼者たる企業を調査する」ものである。
しかしながら当該委員会報告書では、 について調査した結果、吉成や松村の言動について分かったであろう事が記されていない(面談調査はしている筈であるが、その結果が見えない)。

吉成夏子は「顔をつかまれたとかどうこうではなかったが」などと、被害者の証言を否定する内容の報告を新潟県にしていた事が判明している(山口真帆さんはその旨2019年3月22日の記者会見時にそう主張していたが、のちに有志による新潟県への行政文書の開示請求と、その結果開示された新潟県からの公開文書により明らかになった)。
吉成夏子の事件に対する認識が被害者のそれと大きく異なっている事は、委員達も気付いた筈である。気付かなければ何を質問していたのかという事になる。

だが結局、当該委員会が指摘した取締役会の問題は、支配人の権限を不明瞭にしていた事、支配人からの報告が無かった事(本当に無かったのかを検証していない)、体制の問題…程度であり、「事件そのものに対する対応について、取締役会に問題があったかどうか」についての観点が殆ど無い。

そもそも「取締役会」という単語が、機構説明の部分以外で使われているのは、実に最終段落から数えて3段落目と4段落目だけである。

吉成夏子代表取締役、松村匠取締役、彼ら幹部が、「事件当日・翌日に、何を考え、どこで何をしていたのか」について、当該報告書は完全に沈黙している。
取締役会に対してここまで及び腰になっている当該委員会と当該報告書は、「第三者委員会の名に値しない」との批判をこの点でも受けても仕方ない。

ところで、これほど薄っぺらい取締役会への当該報告書の言及にも関わらず、2019年3月22日、松村匠が発表した「AKS内の処分」は、専務(大村)と松村の減給処分であった(マイナビ2019/03/23)。
大量に言及のあった「メンバーのつながり」については、処分はおろか再調査もしなかったのに対し、最後の数行の言及がされた取締役は処分。大村専務は2019年3月22日当時も、2020年12月になっても、特に事件対処で具体的に動いた形跡が無い人物である。
大村専務の担当は「経営・経理・企画全般」とされているが、「経営・経理・企画全般」の立場から、大村専務が何を行ったのかは一切語られて居ない(マイナビニュース2019/03/23)。
一方で、新潟県に事件を矮小化する報告を行っていた吉成夏子代表取締役には、一切の処分が無かった。

会見を委員達が行わなかった

「当該報告書の欠点」というより「当該委員会の欠点」であり、「広報・説明の独立性」節で既述であるが、当該第三者委員会は、自ら広報を行わず、記者会見も自分達では行わず、窓口はAKSで、会見を行ったのもAKS幹部であった〔4-2〕
2021年9月28日現在に至るまで、当該第三者委員会が取材に応じた事は無い。

先述の通り、久保利弁護士は「独立性も何もあったものではない」と、報告書の発表前(2019年3月5日記事)に手厳しい批判をしている〔4-2〕
また会見後には、郷原信郎弁護士が「第三者委員会が報告書に対する質問を受けなければ、会見の意味がない。山口さんが納得していないから、反論される事態を予想していたのではないか」「(第三者委員会が)企業の依頼を受けた通りにやる便利屋的存在になっている」と批判している(産経新聞2019/4/8アーカイブ)。

なお、これらの批判は「第三者委員会がAKS寄りになっている可能性」を考慮しての批判であり、「山口真帆さんの言い分に寄り過ぎている」という観点からの批判は見当たらない。
第三者委員会にAKSから支払われた報酬は4470万円である(産経新聞2019/7/15アーカイブ)。

虚偽は無いであろうが、不足はある

録音データと矛盾の無い記述をしようとして結局文章内の矛盾を投げやりに放置するなどしている当該報告書を見れば、「虚偽は書いていない」と思われる。

だが、
  • 今村悦朗の当日・翌日の行動が一切書かれて居ない
  • 向かいの部屋について掘って居ない
  • 厄介なスタッフの奇妙な言動を突いていない
  • 代表取締役・取締役会の見解を書かず、取締役たちの責任追及は「体制不備」にとどまっている

など、「書かれて居ない」「掘って居ない」不足は、在り過ぎると言わざるを得ない。

第三者委員会格付け委員会の久保利弁護士は、第三者委員会と呼べるものでは全く無い旨述べて当該委員会を切って捨てており、話題性の割に格付け委員会の格付け対象にすら当該委員会は挙げられなかったが、その評価は妥当であろう。

限界はあるが使える理由

ここまで第三者委員会の不足を論じて来たが、本「NGT事件史」サイトでは第三者委員会報告書を多用している。
その理由は、大きく分ければ5つある。

【1】弁護士13名が作成

もちろん上記の通り、欠点はあるが、弁護士が「調査不足」「不利な事は書かない」をやる事はあるにしても、「ウソ」「虚偽」を書くとは考えにくい。
「書かない」のと「ウソを書く」は、レベルが違う。

しかも関わった弁護士が13名である(当該委員として名前が挙がった3名プラス、10名の補助弁護士)。

13名の、事務所の違う弁護士同士が、「ウソを言う事で結託する」とは、考え難い。
そんなリスクある「統一虚偽」を、交流が日常的でも無い13名の弁護士が、「一人も脱落者を出さずに」やるとは、考えられない。

また、性別によって思想傾向を判断する事には慎重になるべきではあるが、委員弁護士3名の内の1人、補助弁護士10名の内の5人は女性である(メンバーへの聞き取り調査を、男性弁護士と女性弁護士のペアで行う為、女性弁護士が約半数となっている)。
強姦未遂も疑われるような事件に、男性弁護士よりも思う所が(その内実は様々であったとは思われるが)強めであったろうと考えるのは乱暴では無いだろう。

【2】誰も当該報告書を全否定しなかった

【2−1】松村匠、早川麻依子、岡田剛

松村匠(当時AKS取締役)は、当該報告書を基にして全員不問と言う結論を出し、当該報告書自体を全否定はしなかった。
つながりの定義について勝手に解釈して山口真帆さんから突っ込まれていたが、松村も当該報告書を全否定した訳では無い。
むしろ松村は当該報告書に基いて結論を出して居る。
その結論とは
>今までのNGT48内での私的領域でのファンとのつながりを含め、風紀の乱れ全般は今回は不問に致します。
であり、「つながり」があった事、そして「風紀の乱れ」があった事を、報告書の会見で認めた(マイナビニュース2019/03/23)。

また松村匠は記者会見で、この調査報告書の内容は事実と捉えているのかという朝日新聞の質問に対し、「書かれていることは事実でございますね。」と認めている(THE PAGE 2019/3/23)。

さらに松村匠は同会見で、あいさつもつながりに含まれるというのは誤った解釈であったと認めている(産経新聞2019.3.22wezzy2019.09.20)。

人望団(NGT48の一部悪質ファン)は当該第三者委員会を懸命に否定するが、当該第三者委員会を否定すると言う事は、松村匠が「全員不問」とした根拠を失わしめるのと同義である。
さらに言えば他に大規模な調査が行われた事実が確認できないため(先述の通り、当該報告書も社内調査の有無に触れていない)、「調査が要らない」と述べるも同義となる。

【2−2】山口真帆さん

山口真帆さんは、「『私が聞いたことがちゃんと書いていない』『自分が言ったことが書かれていない』と述べた」と、【早川麻依子が】述べている(マイナビ2019/03/23)。
記者会見での早川麻依子は、卒業や脱退の話は誰からも来ていないと述べてもおり(実際は村雲さんが2019年2月には運営に卒業を打診していた、オリコン2019/03/23)、どこまで早川発言を信用できるかは不明ではある。
ただ、早川が上記内容を述べた時には山口さんは反論ツイートをしていない。一字一句早川の伝聞通りかどうかはともかく、「報告書に不足がある」と山口真帆さんが認識していた事は、十中八九言える。

一方で、山口真帆さんは自身のツイートで、「報告書に書いても居ない事(挨拶もつながり)を述べるのは勝手な解釈」と松村匠を批判した(テレビ朝日「NGT山口の“反論ツイート”全文」2019/03/22)。
記者会見時に運営を批判した事になるが、報告書をベースに運営を批判した形であり、報告書を全否定はしていない。
もし仮に報告書を全否定するつもりがあれば、あの記者会見時にそうツイートしたと思われるし、それは可能であった。

【2ー3】他メンバー

当該記者会見時点と直後で、他のNGT48メンバーも報告書を全否定していない。

当該報告書には「メンバーと暴行犯らのつながり」が書かれており、名指しは避けられては居るものの、かなり彼女達自身の名誉にかかる記述がなされていた。
仮にメンバー達が書面調査や聞き取り調査の際に述べた事実が反映されていなかったり、「全くグループの現状に当てはまらない」事が書かれて居たりしたら、41名全員が黙っていたとは考えにくい。

当時、ネットに発信手段を持って居たのは山口真帆さんだけでは無い。
山口真帆さんのツイッターフォロワー数は2月には10万を突破していたが、第三者委員会報告書説明会時に「NGT48内フォロワー数トップ」に激増していた。
しかし記者会見前は、むしろ中井りかさん(当時約12万5千)や荻野由佳(当時約13万5千)の方が、ツイッターフォロワー数は多かった。

記者会見直後、フォロワー数10位以内に入っていたのは、当時のフォロワー数画像があるまとめを参考にすれば、以下の通りである。
山口真帆さんのフォロワー数は「時間単位」で増加していたので、以下の数字は瞬間的な過程であり、他メンバーも数字も概数ではあるが、山口さん以外のメンバーは万人単位の変動はこの時期起こして居ない。
(敬称略)
  • 1位:山口真帆(約14万6千)
  • 2位:荻野由佳(約13万5千)
  • 3位:中井りか(約12万5千)
  • 4位:加藤美南(約4万2千)
  • 5位:本間日陽(約4万)
  • 6位:高倉萌香(約3万1千)
  • 7位:菅原りこ(約3万)
  • 8位:太野彩香(約2万8千)
  • 9位:小熊倫実(約2万8千)
  • 10位:西潟茉莉奈(約2万7千)

結果的に「NGT48で最大の影響力を行使したのは山口真帆さん」という事になったが、記者会見当時の潜在能力で言えば、この10位以内の人物の誰かが報告書を全否定するツイートをしても、世論にインパクトを与える事は可能であったと思われる。
この10位以内の人物のうち、2019年1月から3月22日までで、マスコミ記事で特筆されていないメンバーは、事件関係の言動ではほぼ無風であった高倉萌香さんくらいであり、高倉さんの他8名は何らかの発信をすれば、ほぼ100%、複数のマスコミが記事にしたと思われる。高倉さんには前例は無かったものの、高倉さんが何かを発信しても、十中八九、記事になったと考えられる。

実際、当時7位の菅原りこさん(但し菅原りこさんもこのツイートで「急浮上」しており、それまでは10位圏外であった)が以下のツイートを3月22日に行った際、
>ただ真面目にアイドルをしていただけなのに…
>皆さんの笑顔が見たいだけなのに…

>悲しい…
>午後3:04 · 2019年3月22日

このツイートを元に、スポーツ報知2019年3月22日サンスポ2019.3.22マイナビニュース2019/03/22ロケットニュース2019年3月22日といった媒体で記事が出された。
「山口真帆さん以外のメンバーが、(事件に直接触れずとも)一言ツイートする」だけで、これだけの記事が書かれる状態であった。

2019年1月に中井りかさんの一挙手一投足が報道されていたのは、テレビ番組に中井さんが多数出演していたという事情のある別格としても(詳細は中井りかさんと山口真帆さんについてを参照)、小熊倫実さんが山口真帆さんについて「大好きな自慢の副キャプテン」と言及したツイートや、中村歩加さんの苦悩が記事になるなど(jcast2019年01月21日)、3月22日の当該報告書説明会の手前でも、「NGT48メンバーが事件について何かを発信すれば、ほぼ必ず記事になる」状態であった。
中村歩加さんのフォロワー数は10位圏外であったが、記事になっている。

事件と山口さんについて殆ど言及しなかった荻野由佳も、複数の言動が記事になっていた(日刊スポーツ2019年1月13日)。報告書発表日21日にスイカパンを食べている旨のツイートが炎上した事がネット記事になるほど、注目されていた(しらべぇ2019/03/22)。

こうした条件下で、メンバー全員が、潜在能力を行使し当該報告書を否定する行動をとらなかった。
第三者委員会報告書を否定する意向がそもそも無かったか、否定できない事情があったかは不明であるが、いずれにせよ、「これだけの影響力のあるメンバー達が、全員、報告書を批判しなかった」事実は軽く無い。
「運営が当該報告書を否定する言動を禁じていた、つまり運営も当該報告書を否定できなかった」
か、
「メンバーは完全な自由意思で当該報告書を否定しなかった」
の、どちらかである。

何より、2019年4月21日でのチームG千秋楽公演で、山口真帆さん、菅原りこさん、長谷川玲奈さんが卒業を発表した際、8名のメンバーが送辞をツイッターやフォトログで発信し、7名のメンバーは5月18日の卒業公演「太陽は何度でも」に出演した。
それぞれ十分な寄り添いと評価し得るかはともかく、正規メンバーの7割以上が山口真帆さん達に大なり小なり寄り添っている。
相関図、およびNGT48の安心安全7と、その他のメンバー達も参照)

山口さんの暴行態様を認め、自分達の名誉に関わる「メンバーと暴行犯らとのつながり」に言及している3月21日発表の当該報告書の内容に、(少なくとも大枠では)異議があったとは考えられない言動である。

【2ー4】暴行犯

暴行犯が第三者委員会報告書をどう捉えているかは不明であるが、言い分を述べる機会をAKSから、そして第三者委員会から与えられているにも関わらず(なぜ先にAKSが要請を出しているのか疑問に値するのは先述の通り)、応じず、自らの言い分を述べる機会を逸しているのは、暴行犯達の責任である。

「呼ばれていないから、法廷で発言する機会が与えられなかった、茶番民事裁判における山口真帆さん」とは、全く性質が異なる。

有り難くも言い分を述べる機会を貰えたのに、「出禁を解いてくれるなら考えるよ(丙)」との趣旨のふざけた返答をしている時点で、暴行犯には誠実さの欠片も無い事が示されて居る。

【3】唯一最大規模の本格的調査

詳細は上述の通りであるが

第三者委員会は、メンバー41名のうち(体調不良欠席者1名、兼任(柏木さん)1名、山口真帆さんを除いた)38名を、4か所にわけて書面調査を実施。AKS関係者は同席せず。その書面には記名か無記名かを自由に選ぶ事ができた。そして24名が記名し、14名が無記名であった。

また、面談調査は、当該報告書によれば

>本件事件当時のメンバー42名※5、AKS役職員24名、メンバー及びAKS役職員以外14名の合計80名

に、

>委員ないし補助者の2名が一組(メンバーの聴取に際しては、2名のうち1名は女性
>各対象者の供述内容を裏付ける資料等がある場合は、その提出を求め

という形で行われて居る。

ここまでの大規模な公式調査は、NGT48暴行事件において類例が無い。

当該報告書に、当該委員会による調査の前の社内調査の経緯説明や結果説明が無い事を鑑みても、AKS・NGT運営も、80名全員から話を聞いたスタッフは居ないと思われるし、当該委員会が引き継げる規模と質の社内調査は無かったと考えるのが妥当である。

マスコミ記者達にも、80名から話を聞いた人は居ないだろう。

つまり当該第三者委員会による調査は、唯一、大規模な調査が行われた機会だったと思われる。

【4】他メンバーが告発するリスク下で発表された

訴訟等において関係者のSNS発信にも意を用いる事の多い弁護士から成る当該委員会が、「メンバーが自分達を批判し始める可能性」を考えなかった事は有り得ない。

【4−1】メンバーが批判を始める可能性

もちろん、山口真帆さんが当該報告書を批判するリスクも、当該委員会は考えたであろう。

しかし前述(【2−3】)の通り、発信手段を有しているメンバーは山口真帆さんだけではなく、さらには発信が記事になったのも山口真帆さんだけではなかった。
「発信する気になれば即座に発信できるツールを持って居る」
「マスコミが即座に記事にする環境」
この二つが「一般社員」に揃っているのは、当該委員会にとっても稀な環境であったと思われる。

一般企業と異なり、強力な発信手段を持つアイドルグループのメンバー達を相手にした調査で、弁護士達は「メンバー達から『そんな事言ってません』のみならず『正直に答えたのに何で書いてくれなかったんですか』とネットで告発されるリスク」を考えて報告書を書かなければならなかった。
つまり(多様な立場の)全メンバーにもある程度配慮した内容になっていると考えられる。

2021年9月現在、事件本体について語るメンバーは結局山口真帆さんの他は殆ど出現しなかったが(メンバーCが2019年に僅かに抽象的に釈明したにとどまる)、「第二、第三の告発者」が出る可能性も、2019年2月・3月には十分あった。

弁護士13名全員が人望団(NGT48の一部悪質ファン)的なアイドルオタクで、「告発するヤツなんてとんでもない!アイドルは告発しないのが普通!」と発想する人達…などという事は有り得ず、第二第三の告発者が出た時に、自分達が吹っ飛ばないように考える危険回避は考えた筈である。

「第三者委員会は、AKS・運営に対して忖度・斟酌した」と指摘される事が多く、それは否定できない。

しかし一般企業の社員と違って、NGT48メンバーは一人一人が1万〜10数万のツイッターフォロワーを持ち、告発しようと思えばある程度の影響力を行使して告発出来る。

そのリスクに、当該弁護士達13名全員が気付かない筈がない。

【4−2】つながりメンバーが発信する可能性

上記のリスクは、「山口真帆さん側に立つメンバーからの告発」に限られる想定では無い。
例えば「私がせっかく正直に告白したのに、弁護士先生が全部無視してしまいました」等の、「疑惑メンバー・つながりメンバー側からの告発」が、ツイッターとかで他メンバーからなされる、というリスクも、理論上は存在した。

当該委員会報告書で
  • 本件事件後に、数名のメンバーがファンとの「つながり」があったとして自ら申告していること
  • (書面調査で、メンバーは)真摯に回答を記載していた。
  • 36名のメンバーから、他のメンバーとファンとの「つながり」に関する供述があった。その際、12名のメンバーの名前が具体的に挙がった(三鶴注:この「12名」がのちに独り歩きした点は否めない。また12名全員が実際につながっていたかどうかまでは、委員会は掘って居ない)

…といった記述がある事からも、メンバー達は自分達NGT48の問題を(世間で思われているよりは誠実かつ深刻に)捉えていたわけで、委員会もそれは承知したはずである。

したがって、当該第三者委員会には、山口さんと山口さんの仲間からの批判のみならず、つながりメンバーからの「せっかく正直に色々答えたのに、弁護士先生が無視しちゃいました…」などとネット告発されて吹っ飛ぶ危険を回避する動機があったと言える。



以上から、当該委員会報告書は、「メンバー達からの批判を回避する動機を有する弁護士達が書いており、メンバー達の証言を完全に無視した内容は書いて居ない」と推認できる(但し、山口真帆さんからは一部不満の表明があった事(但し早川支配人による情報)は、前述の通りである)。

…但し、誰でも考え得る、「山口真帆さんが貴社会見中に自分達を批判し始める可能性」すらも、AKSは一切考えなかったようであるが。

【5】法的な「安全牌」である。

これは性格と次元の違う、技術的な「使える理由」になるが、一般人が事件を追い、発信するにあたり、当然名誉毀損等の法的リスクは考えなくてはならない。
第三者委員会報告書は、当該委員弁護士3名が「ここまでなら書いても名誉毀損には当たらないだろう」と考えたラインが明示されている。
そしてAKSも、第三者委員会報告書を見て「訴えてやる!」とはならなかった。

つまり「ここまでなら、言っても(言い方にも慎重に丁寧に気を付けなければならないが、内容としては)まず大丈夫」と言える。

但し、当該委員会報告書も、疑惑メンバーにつき実名を一切記述していない事は忘れてはならない。
同定可能性は「B」「C」表記でも存在するにせよ、インターネットでの検索結果に直接的に影響を与え得る実名表記と、アルファベット表記では、扱いに差がある事は、一般人は重々理解し、慎重に振る舞わなければならない。

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