NGT48事件史(NGT48暴行事件ほか) - 不起訴処分
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不起訴処分(ふきそしょぶん)とは、
>捜査の終結段階で,当該被疑者につき検察官が(※)公訴を提起しないことにする処分。捜査の結果,被疑事件が罪とならないとき,嫌疑に証拠不十分のとき,訴訟条件を欠如するときなどのほか,検察官の訴追裁量に基づき起訴猶予処分に付する場合も含んでいる。(引用元:コトバンク
※警察ではなく、検察が起訴するかどうかを決める。NGT48暴行事件では、新潟警察は検察に送致しており、2018年12月28日に不起訴にしたのは新潟地検である(デイリースポーツ2019.01.25THE PAGE 2019/3/22(金))。

基本確認:「不起訴だから事件じゃない」?

NGT48暴行事件において、誤解、またその誤解を悪用した宣伝的言辞で、最も多いのが、「暴行犯は不起訴処分になったのだから、大した事件では無いのでは?」「不起訴だから『警察沙汰』ではあるけれど『犯罪行為』ではない(プロインタビュアー:吉田豪)」「不起訴だから事件じゃない(AKS代表取締役:吉成夏子)」といった、「不起訴」を巡るものである。

不起訴は無罪では無い

第一に、不起訴処分は無罪では無い。
>住田弁護士は「普通の裁判だったら2度と裁判は出来ませんが、不起訴の場合は起訴猶予、嫌疑不十分でも事情が変わったら、もう1回掘り起こして新たな証拠を見つけた場合は起訴することも可能なんです」と捜査が続いている可能性を指摘した。過去の事例についても「本当に少ないですけど。私も検事の時にやったことがあります」と話した。(アッコにおまかせ、スポーツ報知2019年1月20日、弁護士 住吉裕子 先生のコメント

従って一事不再理も適用されず、後日改めて逮捕され起訴される可能性も残されている。

「不起訴=証拠不十分」とは限らない

第二に、不起訴処分の理由の内、「起訴猶予」の場合は、「犯罪はあった、犯人もこの被疑者」と検察が判断していても、不起訴にされているものである。
つまり「不起訴処分」でも、「事件はあった」「犯罪行為はあった」ケースが存在する。
そしてそれは「証拠不十分」ではない。証拠があっても不起訴になるのである。
上記動画に於いて、岡野弁護士は、
  • 不起訴処分には大きく分けて3つ理由がある(「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」)
  • 「不起訴だから事件じゃない」は誤りである。起訴猶予の場合、事件である。
  • NGT48暴行事件における不起訴はほぼ間違いなく起訴猶予である。
といった指摘をしている。

NGT48暴行事件の不起訴処分の理由は、公開されていない。
上記の岡野弁護士も、不起訴の理由については推測をしているが、それは不起訴処分の理由が普通公開されない事も背景にある(今回もされていない)。
刑事事件の弁護を手掛けている弁護士からは、「基本的に開示されない不起訴処分の理由」という制度設計自体に疑問が呈される事がある。不起訴処分の理由が被疑者にも開示されない事もある(不起訴理由の開示|名古屋市中区の弁護士法人 金岡法律事務所 2017年1月19日)。

したがって、
  • 「不起訴処分だから事件では無い」
  • 「不起訴だから暴行態様自体が被害者の言い分とは異なる」
  • 「不起訴だから証拠が無かったと言える」
などの発言は、全て誤りである。

証拠があって犯罪の事実があっても不起訴処分に成り得る」それが我が国における法運用の実際である。

深刻な事件でも不起訴になるのはよくある

「不起訴だから大した事件では無い」については、「女性の自宅玄関で男二人がいきなり女性に襲いかかる」事が「大した事が無い」と発言するのと同義である。
弁護士3名(+補助弁護士10名)から成る第三者委員会が、暴行の態様について、ほぼ山口真帆さんの言い分通りの認定をしているのは、弁護士は無論「不起訴だから犯罪では無い、などとは言えない」事を承知しているからでもある。

デイリースポーツが北村晴男弁護士の見解を事件直後に報道している。
NGT山口真帆を襲った男なぜ不起訴に…暴行罪を「行列」北村弁護士が解説(2019.01.25)
「玄関で女性が顔を掴まれる、かような暴行が事実であっても、不起訴に成り得る」のが、今の日本における法律とその運用である事が、北村弁護士の解説から分かる。
それ自体、一般的な法律・司法制度の問題として考察されるべきである。

刑事で不起訴でも懲戒処分された公務員の判例

2020年6月29日に大阪地裁で、「公務外非行の詐欺で懲戒免職・退職手当全部不支給処分の有効性が認められた裁判例」が出た(2021-01-02、弁護士師子角允彬先生、公務員は公務外非行の詐欺でも退職金(退職手当)まで吹き飛ぶ)。
この処分が有効であると判断された所の公務員は、詐欺事件での共謀を理由に前述の懲戒処分を受けたが、刑事責任の面では不起訴処分・起訴猶予となっていた者である。

不起訴処分・起訴猶予で、かような懲戒処分が有効と認められるのは厳し過ぎるとの見方も可能である。
師子角先生は懲戒処分を受けそうな公務員の権利擁護向けのブログ(公務員−懲戒処分を受ける以前の事情聴取段階から弁護士の関与を)も書いており、上記出典ブログも一方的な立場から書かれたものではない。

但し、2020年6月29日の判例においては、「刑事では不起訴処分・起訴猶予であっても、行政による公務員への懲戒処分は適法」である。
少なくとも現行の制度で「不起訴処分だったから大した事無い」とは一概に言えないのが、判例・実務の現実である。

国会答弁(被疑者補償との関係を巡り)

以下第71回国会 衆議院 法務委員会 第13号 昭和48年3月30日からの引用は、刑事補償法と被疑者に対する補償を巡り議論が行われた部分である。
>検察官の不起訴処分というものを見てまいりますと、罪とならずとか嫌疑なしの理由で不起訴処分にした場合、これに対して補償請求権を認めるとすることは、検察官が行ないますところの不起訴処分に裁判所が言い渡します判決と同じような公の確定力を与えるということになるわけでありまして、それは不起訴処分というものの実質から考えましてどうもそういう確定力を与えるような処分ではない。たとえて申しますれば、不起訴というのは一応の処分ではございますけれども、証拠が集まったという場合にはさらに公訴提起ができるわけでございまして、その後の情状を見て起訴を猶予するということもあるわけでございまして、いわゆる確定的な力を持つ処分ではない。(法務省刑事局長 安原 美穂:第71回国会 衆議院 法務委員会 第13号 昭和48年3月30日
>検察官の不起訴処分と申しますものは、必ずしもいわゆる被疑者の無実を確定するものではない(法務省刑事局長 安原 美穂:第71回国会 衆議院 法務委員会 第13号 昭和48年3月30日

上記の状態はその後変わっていない事は、前述の弁護士達作成の参照文献で分かる。

この法務委員会では、大竹太郎代議士(自由民主党、弁護士、1905年 - 1987年)が、被疑者補償を刑事補償法の中に組み入れる事の検討を提案してもいる。
>憲法四十条の規定から見ますと、被疑者に対する補償というもの、これは規程として置くということも一つの見解かもしれませんけれども、最近の民主的なものの考え方とでも申しますか、そういうような面からいたしますと、この被疑者補償の問題もこの刑事補償法の中に規定を設けてやるべきでないかやというふうなことも考えられるわけでありますが、それに対して法務省の見解をお伺いしておきたいと思います。(自由民主党 代議士 大竹 太郎:第71回国会 衆議院 法務委員会 第13号 昭和48年3月30日

これに対しての法務省刑事局長の答弁に、先の引用部分が含まれている。
すなわち、
  • 不起訴は無実の確定ではない
  • 検察官の不起訴処分の性格あるいは現行の刑事訴訟法が、不告不理の原則、検察官による公訴権の独占にあるため、検察官不起訴処分がすべて裁判所の当否の判断の対象になるのは大きな変革になりかねない
といった理由から、被疑者補償は刑事補償とは別枠にしている、というものであった。

さらに以下第123回国会 参議院 法務委員会 第12号 平成4年6月2日からの引用は、刑事補償法の一部を改正する法律案及び少年の保護事件に係る補償を巡り議論が行われた部分である。
>検察官の不起訴処分には刑事裁判手続における無罪の裁判のように確定力がない(法務省刑事局長 濱 邦久:第123回国会 参議院 法務委員会 第12号 平成4年6月2日

しかしながらこれについては様々な問題も指摘され続けている。

成人の被疑者補償については法では無く大臣訓令であるのに対し、少年の場合には「少年の保護事件に係る補償に関する法律」すなわち法律で補償が行われる違いがある事については、同委員会で北村哲男参議院議員(日本社会党、弁護士、1938年 - )が問題提起している。
>すべての刑事裁判にかかった人たちが、少年も被疑者も被告人も同じように補償されるとなるならば、それはパラレルに考えていくのが当然の、いわゆる法の正当手続に乗った考えだと思いますので、やはり将来はそれについて検討すべき。(日本社会党 参議院議員 北村 哲男:第123回国会 参議院 法務委員会 第12号 平成4年6月2日

現在(2021年8月31日)でも被疑者補償は、刑事補償法とは別の、被疑者補償規程という法務省訓令すなわち法務省の内部規定に基づき、検察官により決定されることとなっている(被疑者補償規程/刑事告訴・告発支援センター)。
2008年12月18日には日弁連から被疑者補償法の制定を求める意見書が出されている((PDF)被疑者補償法の制定を求める意見書 2008年(平成20年)12月18日 日本弁護士連合会)。
弁護士のウェブサイトでも、「被疑者として20日間勾留され、会社を解雇された」といった場合でも、被疑者に対する補償は極めて薄いことが問題として述べられているケースもある(お知らせ・ブログ|千葉県千葉市の弁護士事務所 法律事務所シリウス)。

すなわち、「不起訴処分は無実を意味するものではない」というのが、被疑者の権利保障の観点からも様々な問題と議論を引き起こしつつ、放置されているというのが現状である。

現行制度がもたらす様々な問題についても、あまり世論は動いてはいないものの、議論は専門家の間で続いている。

様々な犯罪での不起訴が不可解と受け止められる事も多々ある昨今、不起訴処分制度自体の議論の必要性が増している。

民事裁判では

「民事裁判で全てNGT事件は片付いたのでは?」と疑問を持たれる方は、
暴行犯と民事で和解した運営
を参照。

不起訴処分の制度面の問題

当サイト管理人は
  • 性犯罪や政治家の犯罪が不起訴で終わる事例の頻発
  • 「嫌疑なし」と「起訴猶予」が同列であるかのように覆い隠す「不起訴処分」という言葉や情報開示の運用
  • 起訴されない事で「明白にシロ」の無罪判決を貰えない被疑者の権利の侵害
といった問題が、現行の我が国の不起訴処分制度に存在していると考えている。

不起訴処分の制度自体に学界では議論が盛んに行われている。

不起訴処分制度の在り方自体に議論がある事については、下記参照。

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